日本の一番北へ行く旅行、つまり新婚旅行

6月3日 旅行前夜

自宅〜羽田空港

生まれて初めての新婚旅行だもんで、いや、まあ新婚旅行を2度やるのはごめんだけれど、ということは一生に一度の旅行になるこの日を待ちわびていたボクは、会社を早退して荷造りをして妻に呆れられたりした。飛行機が早朝出発ということで前泊するために夕方過ぎには自宅から地下鉄、京急線を乗り継いで穴守稲荷駅というところに行く。前夜にわくわくするのは子どものときから変わっていないのだなあと実感する。穴守稲荷駅には石でできたきつねさんが鎮座ましましておったのだけれど、ジャパンブルーな試合着を着せられていたので、きつねさんも大変でおますなあと思った。ホテルの近くのラーメン屋でもつ煮とラーメンを食す。

ちなみに空港は羽田空港である。行き先は北海道。知人からは「新婚旅行なんだから海外に行けばいいのに」と言われるのだけれど、言ってしまえばボクは海外が嫌いで、そして妻も好きじゃない。北海道はボクと妻が出会ってから初めて旅行に行った場所で、ずっと前から新婚旅行は北海道だと決めていたのだ。なにより北海道は飯と酒がうまい。ボクたち夫婦は高い金を出してイギリスで不味いディナーを食すより、近くても美味い飯を、そして酒を喰らうことを選択した。というかそれ以外の選択肢なんて無かった。ということで明日からは(舌が)乾く暇がないくらい(ボクが)ひいひい言わすでー(お腹が苦しくて)、な勢いで食いまくることを誓いつつ、早めの就寝。

6月4日 旅行1日目

羽田空港新千歳空港〜登別

早朝起床にてホテルの駐車場から出ている空港まで運んでくれるバスに乗り込む。空港で荷物を預けて、羽田空港内を散策。国際線ターミナルには年間20回ほど行くのだけれど、国内線はひさしぶり。とは言え、そこは国内線なので特に目新しい物もなく甘いコーヒーを飲みつつ出発を待つ。手荷物検査にて普段の出張と同じようにノートパソコンを取り出しつつ、なんで旅行なのに、と思う。ところで妻は飛行機が苦手だ。なんでって、そりゃあこんな鉄の塊が飛ぶはずがないと思っているから。落ちたらたぶん死ぬし。そんなわけでふわふわする薬をがぶ飲んで、終始ふわふわしていた。
新千歳に到着。手配していたレンタカー屋に行って、コンパクトカーを借りる。国内出張がなくなってから車を運転する機会がほとんどなくなったので、ひさしぶりの運転は割と不安であり、楽しみだった。北海道といえば、果てしなく続くまっすぐな道というおぼろげな印象があり、まだ見ぬカントリーロード、そしてワインディングロードを想像し、コンパクトカーでありつつ気分はスポーツカー(色はワインレッド)だった。

車に乗って最初の目的地である登別へ向かう。iPhoneでこの日のために熟考に熟考を重ねて選曲したプレイリストを流す。半分くらいは移動時間の旅行だからいろいろ妻と相談して決めた。新婚旅行なのだから多少は甘い曲なんかも入れようよなんて言いつつ、いま考えてもなかなか良い選曲だったと思う。流れる曲を口ずさみながら、小一時間ほど車を走らせると鬼が見えてきた。

登別は地獄とか鬼とか多いみたいだ。ここで昼ごはんを食べようと思っていたのだけれど、特に何もなかったのでそのままこの旅で妻が最も楽しみにしていた熊牧場に行くことにした。妻は出発前から「クマー、クマー」と言っていたので相当楽しみだったようだ。熊牧場にはロープウェイでしか行けないので、駐車場に車を置いて乗り込む。妻は案の定怖がっていた。たっぷり15分程度は上って熊牧場に到着。すぐに小熊がいて、妻は大層興奮して写真を撮りまくっていた。

確かにかわいかったのでボクも「クマー」と言った。大きい熊は客商売に小慣れた感じで、餌を持った客を見つけると「くれよ」と手をふったり、立ち上がったり、口を開けたりしていた。

その後も熊が餌につられてブランコに乗っている様を観覧したり、アヒルが走らされる様を見たりして楽しんだ。妻は北海道にきたら木彫りの熊を買おうと決めていたようで探していたが、お目当てのものは見つからずそのまま旅館へ向かった。
登別温泉は割と典型的な温泉街然としていて、何故だか少し懐かしい気持ちになる。泊まったところはおそらく登別温泉で一番豪勢なところだと思う。新婚旅行だからと気合を入れたわけだ。部屋には露天風呂がついていて、食事をする部屋、なんの部屋かわからん部屋、など予想通り大層豪華な部屋だった。妻は温泉に何度も入っていた。食事も美味しかった。お世話をしてくれたおばちゃんが気をつかったのかなんなのか寿と書かれた箸が置かれていて妻と笑った。

ご飯をたらふく食ったあと、おばちゃんが「ちょうど花火やってるよ」と教えてくれたので散歩がてら見に行く。鬼がたくさんやってきて筒から花火を吹き上げていた。不思議な雰囲気でなかなかよかった。その後は温泉街を歩き、お土産などを見て回った。何も買わなかったのだけれど妻は熊の人形が気に入ったようで、何故か写真を撮っていた。